アンガスとあひる
すべての愛犬家に捧げる絵本シリーズ・その1です。
そしてまさにその筆頭の作品であります。
『アンガスとあひる』
作・絵 マージョリー・フラック
訳者 瀬田貞二
とにかく主人公のスコッチテリア、こいぬのアンガスがかわいい。
きっと犬と暮らしたことのある方ならば
「わかるわかる」
と、思わず笑いながら読んでしまうことうけあいです。
僕も読むたびに、昔飼っていたパピヨン犬のことを思い出して笑ってしまいます。
- あらすじ
なんでもしりたがり屋のアンガスは、家の庭の生け垣の向こうから聞こえてくるやかましい音の正体が知りたくてしかたありませんでした。
ある日、アンガスくんはとうとう生け垣をくぐり向こうがわへ。
そこには二匹のあひるがいました。
やかましい音の正体は、その二匹のなきごえだったわけですね。
アンガスくんは最初、二匹を好奇心のままにおいかけるのですが、最終的にはやはり怒りを買ってしまい、逆においはらわれてしまいます。
結局家まで全速力で逃げ、アンガスくんはソファの下にもぐりこんで
『とけいのきざむ、いち、に、さんぷんかん』何も知りたいと思わなくなってしまうのでした。
この絵本の最大の魅力はやはり、上記しましたが、作者マージョリー・フラックの描くアンガスの愛くるしさであります。
絵本によくあるデフォルメされたイラストのかわいさはありません。
アンガスのさまざまな表情、立ち上がって水溜めから水を飲むときの短いあんよ。
あひるにおいたてられるときの必死な走り方。
そのひとつひとつが愛おしくて、思わず抱きあげてキスをしてあげたくなるほどです。
そこには犬(保護すべきもの)が与えてくれる幸せと喜びしかありません。
ただただかわいいだけの絵本には描けない、保護者(大人)からの視点も感ずることできます。
出版されたのは1930年。
翻訳出版に至ったのは、1974年となっています。
近年の絵本には見られないおだやかな時間の流れがこの絵本のなかには閉じ込められています。
そしてこのおだやかな時間の流れこそが、僕が絵本に欲しているものだと実感した作品でした。
ちなみにシリーズもので、全5作となっています。
『アンガスとねこ』
『まいごのアンガス』
『ベスとアンガス』
『トプシーとアンガス』
そしてこの『アンガスとあひる』となっています。
僕が図書館でこの本を読んだ際は、『アンガスとねこ』と『まいごのアンガス』の三つだけしか日本語訳が無かったのですが、2007年ごろに残りのふたつが出版されたようですね。
僕もこの記事を書く際に調べて知り
「えっ! あるの!?」
と喜びの叫び声をあげてしまいました。
ただ出版社と翻訳されている方がちがい、アリス館、まざきるりこさんとなっておりました。
そして残念なことに絶版。
「ほしいなぁ。買っちゃおっかなぁ」と金額を調べたら相当高騰しておりました……。
ふつうの絵本より0が一個多いではありませんか……。
ええいちくしょうめえ!
いつか巡り合う日を祈るしかありませんね……。
話はずれてしまいましたが、『アンガスとあひる』。
ぜひ一度手に取ってみてくださいませ。
あたたかなひだまりのような、おだやかな幸せをくれる絵本です。